日本では5Gが始まったばかりですが、海外ではすでに多くの国で5Gの商用化が始まっています。
「日本の5Gに対する動きは?」
「海外では5Gに対してどのような取り組み方なのか?」
このような疑問にお答えするために、今回は世界に目を向けつつ、日本の5Gの実態を見ていきましょう。
「5Gってそもそもなに?」という人はこちらの記事をご覧ください。
5Gにおける日本の方向性
海外諸国ではすでに多くの国が5Gの商用利用をスタートしています。
一方で、日本の商用化開始は2020年なので、世界的に見れば早いスタートを切ったとはいえないでしょう。
しかし、5Gの存在意義を考えると、確かに「世界初の5G商用利用」であることや、「早い段階での商用利用」には、それほど意味はありません。
日本では「5Gをどのように活用するか」という本質的な部分において、他国より一歩抜きんでた形となっています。詳しく見ていきましょう。
日本の取り組みの歴史
日本は、2020年に開催予定だったオリンピック・パラリンピックに合わせて、5Gの商用化に熱を注いできました。
オリンピック・パラリンピック2020は現状延期という形となりましたが、5Gの商用化は予定通り、すでに始まっています。
<日本における5Gの歴史>
2015年に5Gにおける3大ビジョン(①高速大容量通信②超信頼・低遅延通信③多数同時接続)が世界標準として設定されると、日本でも5G技術の研究が進んでいきました。
2017年には、通信事業者がそれぞれで独自の取り組みを開始。
2019年に5G周波数の割り当てが行われると、国内3大キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)は限定的なエリアにおいて、5G商用サービスを前倒しでスタートさせました。
ただ、前述の通り、5G商用化はすでに世界各国で始まっており、早いところでは2018年にはスタートしています。
では日本が遅れをとっているのか、というと、決してそうとは言い切れません。
5Gの活用可能性を見出すことで、他国を先導するポジションに
日本は5Gの世界初商用利用、あるいは早い段階での5G商用利用にはこだわっていませんでした。
日本は「5Gをいかに人々のライフスタイルに組み込んでいくか」という方向で注力していたのです。
5Gの存在意義は、実はそこにあります。
4Gによって、ある程度通信サービスにおける利用時の制限が解決しているのは事実です。
一定の場所や時間において通信速度が遅くなることはあるにせよ、現状の通信サービスを届けるという意味合いでは、不自由はありません。
通信事業者においては、通信インフラの新しい活用可能性を見出す必要があります。
一方で
高速大容量通信によって、エンターテインメント業界に革新が起こり
超信頼・低遅延通信によって自動運転が現実味を帯び
多数同時接続によって、スマートファクトリーが実現する
といったように、5Gは人々の生活をもう一つ上のステージへ上げることが可能です。
そこで日本は「5Gによって何ができるのか」という点に集中し、5Gの活用方法を見出すという部分で、世界をけん引するポジションについています。
具体的にいえば、通信事業者が企業とパートナーシップを組むことで5Gの可能性を発掘していますが、そちらはまた別記事でご案内します。
「世界初の5G」を目指した国々
日本とはある意味対照的に、多くの国が5Gの世界初商用利用や、早い段階での商用利用を狙ってきました。最後に米韓の例を紹介していきます。
米韓はすでに、2018年に5Gの商用サービスを開始。2019年4月3日には、スマートフォン向けの5Gサービスもスタートしています。
あとを追うのが中国やヨーロッパ諸国、そのほかにはカタールも2018年5月から5G商用サービスを開始、中東や中央アジアも続きます。

米国の動き
米国の動きを見ていきましょう。
2018年10月、まず電気通信事業者トップキャリアのベライゾンが、「ベライゾン 5G Home」という、据え置き型の端末を用いた5G商用サービスを開始しました。
ベライゾン 5G Homeは回線工事を必要とせず、文字通りその場に置くだけで、無線LAN環境を作り出せる端末です。
ちょうど日本でも、ソフトバンクが「ソフトバンク エアー」という端末を提供していますが、これもベライゾン 5G Homeと同様のサービス形態となっています。(ソフトバンクエアーは現状5Gには対応していません)
2018.10~ ベライゾン「ベライゾン 5G Home」リリース
2018.12~ AT&T、モバイルルータによる世界標準の5Gサービスリリース
2019.4.3~ スマートフォン向け5Gサービスリリース
韓国の動き
2019.3.13 米ベライゾンが同年4月11日~スマートフォン向け5Gをスタートさせると宣言(韓KTは同年4月5日だった)
→急遽ベライゾンが前倒しで4月3日にサービスを開始
2019.4.3 韓国勢3社も合わせてスマートフォン向け5Gサービスを開始
ややベライゾンに振り回された感は否めませんが、時差に違いはあれど、韓国も「世界初の5G」であることに強い意義を抱いています。
今後は各国で5G活用方法を競うレースに
5Gにおいては、各国それぞれで思惑があり、動きが変わっています。
世界初にこだわった通信事業者が多いのは、やはり移動通信システムの変遷が、10年に一度の大イベントだからでしょう。
しかし、世界初の5Gがすでに始まっている以上、当然ながら今後は世界初にこだわる必要はありません。
これからは「どのようにして5Gを人々の生活に活かすか」の各国賞レースになると予想されるでしょう。