『バジュランギおじさんと、小さな迷子』ずっといい映画と、その裏側について

Bajrangi

純粋がくどくない
『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

2020年以降に観た映画の個人的感想を、ライター目線で書くだけ書いてみるコーナー。

2回目は、5分で展開が読めるのに感動してしまう映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』です。

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概要とひと言あらすじ

タイトルバジュランギおじさんと、小さな迷子
ジャンルヒューマンドラマ
監督カビール・カーン
出演サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、カリーナ・カプール、ナワーズッディーン・シッディーキー
上映時間159分
配給SPACEBOX
劇場公開年2019年(日本)
公式HP公式HPはこちら

本作オススメ度

4.8
4.8/5

ひと言あらすじ

インドからパキスタンまで、700キロの旅———ささいなことからインドで迷子になってしまった、声をなくしたパキスタン人の女の子と、心優しきインド人の青年バジュランギとの、国境や宗教を超えた2人旅。

展開は読めるが、泣く自分も読めるヒューマンドラマ

まず、個人的に申し上げたいのは、インド映画に対する免疫力が上がる映画であったと思います。

インド映画は、圧巻のパフォーマンスで描くド派手なダンスシーンが特徴的ですが、若干そのくどさにニガテ意識がありました。

本作も、もちろんダンスシーンは豊富に組み込まれているのですが、それ以上に「これは感動するヤツだろうな…」といった空気が序盤から流れているので、そのくどさが気になりません。

アップリンク吉祥寺がまずよかった

アップリンク吉祥寺に観に行ったのですが、そもそもあの映画館も、この映画の評価にプラスしている気がします。

東京は吉祥寺に構えるミニシアターですが、館内はビビットなカラーかつ、近未来的な内装(照明の具合が絶妙で、宇宙系アトラクションに乗り込んだかのような高揚感があります)で、エスカレーターをくだっていくところからすでに感じる別世界観。

どうやら音響にもこだわりがあるらしく、知らずに映画を観始めると、その臨場感に少しびっくりするほどです。

上映作品のセレクトも素晴らしいので、ぜひ。また、クラウドによる映画配信も行っています。

アップリンク クラウドをのぞいてみる

予想はスケールに裏切られる

話は逸れましたが、ともかくいえることは、序盤からラストの展開は読めます。

絶対にこうなるであろうと予測がつくからこそ、どのように舵取りをしてその結末に向かうのかが気になって、引き込まれていきます。そして、結末は予想できますが、その予想を最終的に大いに裏切ってくれるのが、本作のスケール感です。

このスケール感には、背景に映し出される、「インドの風景」がまずは含まれます。
ぜひグーグルマップにて、ソナマルグなど、カシミールの山岳地帯を検索してみてください。この辺りは「この世の天国」とも呼ばれています。

そして、「人の数」という意味でも、壮大なスケール感が描かれています。若干ネタバレしますが、エンディングに登場する人の数は、実に約7,000人です。

映画をより楽しむポイントは「インドとパキスタンの関係を考える」こと

「この映画は、ヒンドゥー教とイスラム教、インドとパキスタンの対立を終わらせる可能性を秘めている」

引用:『バジュランギおじさんと、小さな迷子』公式HP内プロダクションノート

主演のサルマン・カーンはこのように述べていますが、インドとパキスタンの関係を知ることは、この映画をさらに楽しむ一つのスパイスとなります。

とても簡単に解説する「インドとパキスタン」について

恐れながら大雑把に二国について説明すると、

インドとパキスタンは両国とも、もともとは旧インドとして、イギリスの植民地配下にありました。このとき、イギリスは国民の反感がイギリスに向かないよう、もともと考え方の違う(食べるものも違えば、神様に対する意識も違う)イスラム教とヒンドゥー教が、対立するように仕向けていたのです。

一方で、その策もむなしく、イギリスに対する反感は増していきます。
そして1947年、第二次世界大戦後に旧インドはイギリスから独立。このとき中心になったのが、「マハトマ・ガンジー」です。ガンジーの名は覚えている人も多いのではないでしょうか。

ガンジーは、イスラム教徒もヒンドゥー教徒も一つになるように努めていましたが、結局現在のインドとパキスタンの形に分裂し、それぞれに独立してしまいました。

地域によってはヒンドゥー教徒もイスラム教徒も混在していましたが、過激派ヒンドゥー教徒によってガンジーが暗殺されたことを機に、各教徒は迫害を恐れ、ヒンドゥー教徒はインドに、イスラム教徒はパキスタンへと移動していったのです

ともかく国境を越えるのが難しい

この移動の際には100万人以上が亡くなったとされており、より対立が深まるきっかけとなりました。

そこからまた、カシミール戦争(カシミヤで有名なカシミール地方を、どちらの領土にするかという問題)が起こったり、アメリカや中国が介入してきたりするなど…

ともかく二国間の対立は、ある時期にはより深まったり、あるいは緊張が緩和したりを繰り返しているのです。

どこの国でも、隣国問題はあるといえるのかもしれません。

話を映画に戻しますと、本作でも描かれているように、インドとパキスタンでは国を行き来するのが非常に困難になっています。

二国間には列車が通っていますが、緊張が高まると運行が停止されます。劇中ではパスポートやビザを持たずに越境しようと試みますが、いずれも命の危険が伴うレベルで阻まれていきます。

このような、いわゆる印パ問題を理解していると、劇中で描かれるその辛さや過酷さも、より切迫した事実として受け入れられるのです。

優しく重いテーマだからこそ、ぜひ押さえたい映画

少し重たくなりましたが、だからこそ、より壮大なスケール感で観られる映画です。

重くても受け止めたくなる、優しいテーマであふれている『バジュランギおじさんと、小さな迷子』をぜひ観てみてください。きっと、プラスな気持ちになれるはずです。

映画館での上映情報は、公式Twitterにて。

アマプラなどでも追加されるかもしれません。DVDは以下からどうぞ。