『はじまりへの旅』生き方の理想を見つけるためのロードムービー

hajimari-tabi

生きるうえでの選択に悩んだときに
『はじまりへの旅』

2020年以降に観た映画の個人的感想を、ライター目線で書くだけ書いてみるコーナー。

今回は、アカデミー賞ノミネートやカンヌ映画祭監督賞受賞など輝かしい経歴を持つロードムービー『はじまりへの旅』です。

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概要とひと言あらすじ

タイトルはじまりへの旅
ジャンルヒューマンドラマ
監督マット・ロス
出演ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、ジョージ・マッケイ
上映時間119分
配給松竹
劇場公開年2017年(日本)
公式HP公式HPはこちら

本作オススメ度

4.0
4/5

ひと言あらすじ

ベン・キャッシュと6人の子どもたちは、現代社会とはかけ離れたアメリカ北西部の森の奥深くで、「普通」ではない暮らしをしていた。ある日、母レスリーが亡くなったことを知った一家は、母の葬儀のため、そして母のある「願い」をかなえるために、葬儀が行われるニューメキシコまで2400キロの旅に出る決意をする———

ロードムービーにして、ロードムービーにあらず

旅をして、何か大切なものを見つけ、あるいは気づき、よかった感動した、はいおしまいではありません。

一見すれば「いき過ぎた愛情」に見え、また違う見方であれば「生き方にはバランスが大事」と達観し、そしてまた別の見方をすれば「生き方の原点を思う、大自然のように美しい映画だった」と、多種多様な感想が生まれる映画だったように思います。

観れば人生についてかなり深くまで考えざるを得ず、ぐちゃぐちゃに考え込んでいるときにこそ、何かヒントが見つかるような映画かもしれません。すっきりしそうで、すっきりしない。でも、間違いなくいい映画であることはいえる。観るときの自分の状態、タイミングが重要な映画です。

父と子のずれ

一人で生きていく力を身につけさせたい父

ともかく父ベンが博識で、バグパイプは演奏できるし、鹿の血抜きも教えられる。崖のぼりの方法なんかも伝授し、子どもたちはみなアスリート並みの体力を備えていきます。

それでいて勉学も疎かにしない。みな6カ国語を操ったかと思えば、超ひも理論についての考察もする。18歳の長男は陰でハーバードやマサチューセッツなど名門大学の入試を受けますが、すべて合格。

ともかく父は子どもたちに、「一人で生きる力」を身につけさせようとするのです。

「普通」を感じたい子どもたち

ある面では洗脳ともいえるほどの熱意ある教育ですが、その一方で(そのせいで)、子どもたちは「普通」の生活とは一線を画されてしまいました。

家庭用ゲームで遊ぶ、コーラを飲む、温かいお湯の出るお風呂に入る、いわゆる「普通」の暮らしへの抵抗と、そして少しずつ憧れも抱いていきます。

「母親」が裏キーワード

物語の「転」としては、遠く街で暮らす母レスリーが自殺することに始まりますが、ここから彼らに、自分たちの生活への葛藤が生まれます。

自分たちの暮らしが特別であるとわかっているからこそ、普通に対する恐れがある。それを守るべきか、壊すべきか。子どもたちも成長をして、自我が芽生え、家族で一つの感情を共有していたはずが、それぞれの生き方の理想を想像し始めるのです。

幸か不幸か、母親の死が、葬儀が、そして母のある願いが、自分たちにとっての正解を探すきっかけを与えてくれたのでした。この映画で裏テーマ的に一貫しているのは、母親が家族全員を優しく包み込んでくれていることだったように思います。母への思いが、家族の絆にもつながっていきます。

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誰もが人格を持っている

このままでは現代社会で生きていけない、ではどうするのか。自分たちそれぞれの、生きる理想とは?

こうありたい、こうしたい、この理想のぶつかり合いの中で、どのようにして生きるのか。それをベンたち一家が伝えてくれます。彼らに自分を重ねてみれば、考え込んでいるときにこそ、何か答えが見つかりそうな映画でした。

AmazonPrimeVideoで見られるので、ぜひ。