カトパンなら先生でもありがたい。
2020年以降に読んだ本の個人的感想を、ライター目線で書くだけ書いてみるコーナー。
今回は、フリーアナウンサーである加藤綾子氏による『会話は、とぎれていい 愛される48のヒント』についてです。
概要とひと言要約
タイトル | 会話は、とぎれていい 愛される48のヒント |
著者 | 加藤綾子 |
ページ数 | 198ページ |
第1刷発行 | 2019年4月16日 |
発行所 | 株式会社 文響社 |
本書オススメ度
ひと言要約
著者加藤綾子氏が「生徒の代表」になって、コミュニケーションの達人たちから学んだ「愛されるヒント」を伝えていく。
「本のASMR」というべき一冊
まず言いたいことは、本書は上品な一冊です。
最初から最後まで、加藤綾子氏に一語一語ていねいに語り掛けてもらっているような、そんな品のよさがあります。それでいて、まったく嫌味ではないし、鼻につく感じもない。
これは、一朝一夕に身につくようなものではないように思います。普段から、自分の発する言葉に気を配り、意識を向けている人にしかまとえない品です。
この本を読むだけでも、少し背筋が伸びるような、そんな一冊です。
著者の立ち位置に面白さの秘密がある
内容としての魅力を語るなら、著者の立ち位置については外せません。
通常、いわゆる実用書的な書籍は、著者が「先生」となって、読者にさまざまなテクニックやコツを教えていきます。
しかし、ことコミュニケーションに関しては、状況次第でテクニックが通用しないというシーンは、往々にしてあります。(たとえば、話すときは相手の目を見て話す、話につまったら共通の話題(天気や仕事)を振るなど)
事実、著者である加藤綾子氏が、アナウンサーとして明石家さんまさんやタモリさん、笑福亭鶴瓶さんといった著名人をはじめ、企業経営者やスポーツ選手など、多くの話し手・聞き手のプロと接した中で感じたことも、「今すぐ使えるコミュニケーションテクニックは多くない」ということでした。
彼らコミュニケーションのプロたちが大切にしているのは、テクニックよりも、相手への気づかいや心のあり方といった、本質的な部分だといいます。
結果としてこの本における著者の立ち位置は、これまでのコミュニケーション実用書のようなものではなく、プロの話し手・聞き手から教わった「愛されるヒント」を、「生徒代表」として伝えていくものとなります。
自身の失敗談も多く語られる
話し手・聞き手のプロの教えを、読者に伝えてくれる「仲介者」でありながらも、同じ目線に立っているので、自身の失敗談や数々のエピソードも惜しげもなく語ってくれます。
それがまた、この本の魅力を引き出してくれるエッセンスの一つです。
高島彩アナウンサーの後釜として注目されつつも、過度な期待を向けられたことにより挫折しかけたころの話や、パーフェクトに思える彼女自身の容姿に対する悩み、そしてそれを誰がどのような言葉で救ってくれたかも、丁寧に伝えてくれています。
「教える」ではなく「伝える」本
お伝えしてきた通り、本書の著者の立ち位置は「先生」ではありません。あくまで、今まで彼女が接した人たちから学んだ、コミュニケーションを楽しむ数々のヒントを「伝える」立場にあります。
それがかえって彼女の人柄を伝えており、謙虚で上品な姿勢には、学ぶことも非常に多い一冊です。