5G(第5世代移動通信システム)の出現によって、それまで「人」のみが受けていた移動通信システムの恩恵を、これからは「あらゆるモノ」が受けられるようになります。
5Gの世界は、人々の生活をどのように変化させるのでしょうか。今回は、5Gの概要をいくつかの節に分けて、分かりやすく解説していきます。
その前に、プロローグとしてまずは、5Gが普及した未来を少しだけのぞいてみることにしましょう。
今回は、工場に勤めるあるサラリーマンの一日に密着します。
工場勤務管理者トオル(40代)の一日
建機部品工場に勤めるトオルは、生産ライン管理の責任者を務めています。
社内での業務のみならず、営業とともに得意先へ出向くことも多く、忙しい日々ながらも充実した毎日を送っています。
【出社】5Gによる「つながるクルマ」で安全運転支援
トオルの自宅から会社まではやや距離があるため、トオルはマイカー通勤をしています。
この日も、いつものようにインターチェンジから高速道路に乗るため、車を走らせていました。
しばらくして大通りの交差点に差し掛かったところで、前方の車が左折しようとしていたので、トオルはそれを右に避けてから直進しようとしました。
すると、クルマから
「ピピッ!対向車が右折しようとしています。注意して走行してください」
とアラートが表示されました。
トオルのクルマのフロントガラスには、前を走るクルマから見える映像が投影されており、映像には右折しようとする対向車が見えます。
トオルは「あぶない運転するなあ」と思いながら、注意して運転を続けました。
【社内業務】スマートファクトリーの実現
会社の駐車場に到着したトオルは、クルマを自動運転モードに切り替えます。クルマが駐車スペースに入る間に、今日のスケジュールの確認を済ませます。クルマから降りたトオルは、さっそく事務所で着替えを済ませ、工場内に入りました。
工場はすでにICT化が進んでおり、ロボットアームによる生産ラインの自動化がなされています。クラウド上の制御システムに則り、すべてのロボットアームは滞りなくスムーズに作業を繰り返しています。
トオルの仕事は、国内の発注状況を鑑みて、生産量をコントロールすることです。過去の発注履歴だけではなく、AIが算出した予測生産量も加味します。
また、タブレットに送信されるデータを確認しながら、ARで装置状況を表示して把握したり、危険な箇所があれば修復・排除したりするなどして、都度最適管理しています。
スマートファクトリーとは
ドイツ政府が提唱したインダストリー4.0を背景とした、IoTなどによる最先端テクノロジーで省力化された先進的な工場のこと。5Gによってスマートファクトリーは「当たり前の環境」になるとされています。
【社外打ち合わせ】大容量データを一瞬でダウンロード
生産ラインにおける業務は午前中でひと段落ついたので、午後からは営業のジュンヤとともに得意先に訪問します。
得意先は2駅ほどの距離なので、電車で行くことにしました。
2人は移動中、社内の持ち運び可能データを確認しながら、新たな提案商材の内容を改めて共有します。動画も含む大容量データですが、電車に乗りながら一瞬でスマートフォンに取り込むことができました。
高速大容量通信5Gには主に3つの定義がありますが、そのうちの1つが高速大容量通信です。5Gによって、大容量のデータであっても移動中にすぐさまダウンロードすることができます。
【退社】パーソナライズによる広告の進化
得意先への提案は、事前に確認したデータのおかげか、無事に新しく大口契約を結ぶ、嬉しい結果となりました。
営業のジュンヤは「せっかくなので、大口契約を祝して一杯引っかけますか!」と誘うと、トオルも「そうだな、行くか!」と乗り気です。
クルマは会社に置いておくとしても、さてどこに行こうかと悩んでいると、駅のデジタル広告が2人を感知して、隣駅に新装オープンした居酒屋の紹介映像が流れ始めました。ちょうど2席空いているそうです。
2人は目を見合わせ、さっそくスマートフォンで予約を済ませて、華の金曜日を楽しむために電車にいざ乗り込んでいくのでした。
5Gの世界は、あり得ない未来ではない
いかがでしたでしょうか。上記に挙げた世界は、決してあり得ない世界ではありません。むしろ、5Gによってすぐそこまで迫った近未来です。
5Gによって、あらゆるモノが移動通信システムの恩恵を受け、その結果、人々の暮らしはますます新しいステージへと進んでいきます。これから、さまざまな人の5Gによる暮らしを見つつ、より詳細な未来の形を見ていきましょう。